天然の日焼け止め「タナカ」を塗り、巻きスカートの「ロンジー」を履く。ミャンマーの田舎に住む人々は、農業を基本にした伝統社会に暮らしている。
経済発展著しい最大都市ヤンゴンや第二の都市マンダレーなどでは、若者の生活スタイルも今風に変化している。そう遠くない将来、農村の風景も様変わりするだろう。しかし今はまだ、昔ながらの暮らしが静かに営まれているのだ。
ありふれた日常の中に、はっと目を引く所作がある。ミャンマー西部ラカイン州で女性たちがお米の脱穀を行っていた。鮮やかな青空と伝統のロンジーとのコントラストも、大きく体をねじったポーズも、すべてが絵になっていた。
湖に咲く蓮の花を、小さな舟に乗った若者が摘んでいた。ミャンマーに住む仏教徒にとって、蓮の花は特別なもの。祈りの儀式に欠かせないお供え物だ。
ミャンマー女性の必須アイテム「タナカ」。日焼け止めと化粧品を兼ねたタナカは、伝統的に「タナカの木」をすり潰して水で溶いて顔に塗るのだが、最近では水を加えるだけで使える「レディーメイド・タナカ」の需要が急増している。この女性が持っているのが工場で作られるタナカ。1個8円だそうだ。
真剣な眼差しで糸車を回す女。ミャンマーの田舎には昔ながらの手作業に頼った機織りが今も受け継がれている。服装といい表情といい、明治時代の日本人のように見えた。
化学染料で染めた糸を竹竿に吊して乾かしている若者。染められ糸は織物工場に運ばれて、民族衣装の「ロンジー」になる。茶髪に染めた今風の若者であっても、ちゃんと巻きスカートのロンジーを履いているのがミャンマー人らしい。
ミャンマー第二の都市マンダレー郊外にある「ウーベイン橋」は、チーク材を用いた全長1200mにもなる木造の橋だ。夕暮れ時ともなると、国の内外から多くの旅行者が押し寄せる観光地になっている。古い木造橋とその向こうに沈む夕陽のコントラストは、ミャンマー屈指の美しさだ。
凜とした眼差しを向ける少年僧。ミャンマーの仏教徒には「一生に一度は出家する」という不文律があり、多くの男子は子供の頃に出家して僧院に入って修行する。共同生活を送りながら、仏教を学び、社会の厳しさを知るのだ。
夕暮れが迫る頃、クワを振るって畑を耕す若者がいた。ミャンマーでは男性も「ロンジー」と呼ばれる腰布を履いて農作業を行う。男性用のロンジー(パソー)は、地味なチェック柄が主流だ。
ピーナッツを収穫するミャンマーの農夫。ピーナッツは茹でたり炒ったりして食べるだけでなく、食用油の原料にもなる。料理に油を多用するミャンマー人にとって、生活に欠かすことのできない作物なのだ。
稲刈りをする女たち。ミャンマーでは田植えも稲刈りも主に女性が行う仕事だ。日除け対策に笠をかぶり、顔には日焼け止めのタナカを塗って農作業に臨む。ミャンマー女性にも美白に対する憧れが浸透しているのだ。