まずはミャンマーに向かいます
11月11日から、(毎年恒例になった)長旅に出ています。まずはミャンマーに飛んで、12月はバングラデシュ、1月からはインドをバイクで旅する予定。僕にとって馴染み深い国々ではあるけど、できるだけ新鮮な気持ちを保ちながら、新しい表現にも挑戦していこうと思っています。
成田からタイ航空に乗ってバンコクへ。バンコクでエア・バンコクに乗り換えてマンダレーへ向かいました。ヤンゴンを経由せずにその日のうちにマンダレーに到着できるなんて便利になったものだと思います。マンダレーは僕のミャンマー旅における拠点なので、早く着けるの大変ありがたいのです。
ちなみに今年の10月から日本人と韓国人はミャンマーの入国ビザが免除になっています。これまで当たり前だったビザ取得の手間や費用がすべて無くなったのは素晴らしい。1年限定の措置のようですが、このまま継続されることを祈ります。
ミャンマー人の「ピン札信仰」
ミャンマーでは、ホテルの支払いはUSドル。そのほかの支払いは基本的にミャンマー・チャットです。マンダレー空港の両替所でUSドルをチャットに両替しようとしたところ、「これは折れた跡があるからダメ」と突き返されたのです。
正直「折れた跡なんてどこにあるの?」ってレベルだけど、これでもダメなんだって。ミャンマー人のピン札へのこだわりは凄まじくて、折れた跡もシミもない本物のまっさらのお札を(少なくともUSドルに対しては)しつこく要求されるのです。両替所では「このお札でも両替はできるけど、レートは5%下がる」と言われました。旅行者はとにかく米ドルのピン札を用意。これがミャンマー旅行における基本中の基本なのです。
ミャンマー人が使い古したお札を避けているのは「偽造されている恐れがある」という理由からだそう。でも使い込まれて汚れたお札って、それだけ多くの人の手に渡って流通してきたんだから、むしろ「本物として信用されている」って証拠なんじゃないかって思いますけどね。
結局、通貨とは共同的幻想であり、信用の産物なんだってことがわかります。みんなが「それは100ドルの価値がある」と信じれば、その紙切れには確かに100ドルの価値が生じるし、「これは価値がない」と信じれば他の国の事情がどうであれ、その紙切れには価値がなくなるのです。
マンダレーに帰ってきたよ
3年連続でマンダレーから長旅を始めたのは、この街が穏やかで、インドのような「異国感」が小さいから。居心地の良い定宿があり、行きつけの定食屋がある。知り合いや友人もいる。「また帰ってきたよ」って気持ちになれる街なのです。
たった今、撮影した動画です。ミャンマー第二の町マンダレーに夕日が沈んでいく様子。地球が静かに回っています。 pic.twitter.com/FVBvQed3Bb
— 三井昌志 (@MitsuiMasashi) November 12, 2018
マンダレーは猫が多い街だ。路地裏をぶらぶら歩いていたり、安心しきった表情で昼寝したりしている野良猫をよく見かける。野良犬ばかりで猫を滅多に見かけないインドとはまったく違う。それで岩合さんみたいに、ついついかわいい猫を撮ってしまうのです。
マンダレーの下町で雑貨屋を営むのは、だいたい陽気でおおらかでどっしりとした女性です。彼女が右手に持っているのは旗ではなく「ハエよけ」。お菓子や揚げ物にたかるハエを追い払っているわけです。今日もミャンマーらしいゆるい空気が流れています。
ミャンマー第二の街マンダレーには、大理石の仏像を作る工房が軒を連ねる一角がある。全国の寺院に収められる御本尊を作っているのだ。石の粉をかぶって真っ白になった石工が一休み。お釈迦様がそれを見守っている。
マンダレーでは托鉢に回る尼僧の姿をよく見かける。ピンク色の袈裟を着て、日傘をさした尼僧は、街中で目を引く存在だ。男性の僧侶の托鉢をあまり見かけないのは、有力な寺院には信者による寄付が集まり、托鉢をする必要がないからだそうだ。
マンダレーで借りた中国製のバイクは、とにかくオンボロでトラブル続きだ。まず乗り心地が最悪。どういう人間工学に基づいているのかわからないが、運転手の座り心地の事など一切無視して設計されているから、毎日お尻の痛さと戦いながら移動している。でもミャンマー人は文句ひとつ言わずに乗っている。たぶんお尻の方をバイクに合わせているのだろう。
マンダレーは京都のように碁盤の目状に道が整備された街だが、交差点の多くには信号がない。車やバイクがどのようにして交差点を通過しているかというと、ご覧のように「流れを読みながら、あとは気合で渡る」のが正解のようだ。事故? もちろん、しょっちゅうぶつかったりしています。 pic.twitter.com/ebqDZLxDgY
— 三井昌志 (@MitsuiMasashi) November 14, 2018
地面に穴を掘っているおばさんがいたので、何をしているんだろうと近づいてみると、バケツの中には大型のコオロギがうようよ。もちろん食用に捕まえているのだ。「あんたも食うかい?」と一匹差し出されたが、さすがに生コオロギはちょっとね…揚げコオロギはエビに似た味で結構美味です。
美しい夕焼けだった。空と雲が赤く焼けていく中、男たちが輪になってチンロン(籐製の球を蹴り合うミャンマー伝統の遊び)に興じていた。そんな人と自然の営みを、古い仏教遺跡が見つめていた。
11月22日はミャンマーの祝日で「タザウンモンの満月のお祭り」が行われていた。満月の夜はパゴダ(仏塔)を無数のろうそくで照らすのが、仏教徒の習慣なのだ。ひとつひとつ人の手で点けていくので、時間も手間もかかる。何を祈りながら灯しているのだろう?