バイク人口の少ない国

 バングラデシュには旅行者向けのレンタルバイク店は存在しないから、バイクを借りるのは僕の個人的な知り合いから、ということになる。

 バングラデシュではバイクはポピュラーな乗り物ではない。インドから輸入されるバイクには100%という高い関税が課せられているので、庶民が気軽に買えるような値段では売られていないのだ。ガソリン代も高い。1リットル86タカ(120円)は日本と変わらないレベルである。

 資源を持たないバングラデシュでは、国全体で「化石燃料の使用を極力控える」ための制度設計がなされていて、だからCNG(圧縮天然ガス)オート三輪や、蓄電池とモーターを搭載した電動リキシャなどは広く普及している。すべて乗り合いが基本だ。バイクや自動車のように「自分だけの足」としてどこへでも自由に移動できるビークルは、この国では高くつくし、あまり普及していないのだ。

 

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 今回借りたのはインドBajaj製の125ccバイク。バングラデシュではもっともポピュラーなバイクのひとつだ。もの自体は悪くないのだが、かなり古いのと、メンテナンスが良くないことが重なって、たびたびトラブルに襲われた。

 一番困ったのは、走行中にバイクの鍵がなくなってしまったこと。エンジンがかかったままの状態で、ポロっと抜け落ちたらしい。これには参った。運悪く100km以上ノンストップで走り続けていたので、どこで鍵を落としたのかがまったくわからない。スペアキーもないし、夕暮れが迫っていたので、鍵を探しに戻ったら、おそらく日が暮れてしまうだろう。仕方がないので、翌日に部品屋に行って新しいキーとロックを購入し(650タカ/900円)、それを持って修理屋で交換してもらった。

 

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 部品屋の主人は、僕が日本人だと知ると、
「日本のバイクはとても優秀だが、純正の部品はとても高い。なんであんなに高いんだ?」と訊ねてきた。
「品質が高いからじゃないですか。だって日本じゃ走っている間にキーが抜け落ちるなんてありえないですよ」
「そりゃそうだな」と主人は納得した。
 日本でキーが抜け落ちることがまったくないとは言い切れないが、少なくとも頻繁に起きるトラブルではないはずだ。もしそんなバイクがあったら、リコールの対象になるんじゃないだろうか。

 

 

インドの3倍危険な道

 インドをバイクで旅するのもかなりの危険を伴う行為だが、バングラデシュでバイクを走らせるのは、おそらくその3倍程度のリスクがある(個人の感想です)。交通量がめちゃくちゃ多いうえに、道幅は狭く、交通ルールはないようなもので、都市部であっても田舎であっても、常に緊張を強いられるドライブになるからだ。

 

 

 とはいえ、バイクではなくてバスやリキシャや徒歩であっても安全とは言えない。
 例えばこんな道。いや、道ではないんだけど、こういう鉄道橋でさえも(もちろん列車が来ないのを確認してから)渡ってしまうのがバングラ人なのだ。日本でこんな動画をアップしたら(どこかのママタレントみたいに)即炎上だよね。

 

 

 バングラデシュはガンジス川(ポッダ川)の河口デルタにある国で、幅が数キロにも及ぶ大河がいくつも流れている。橋が架けられている場所は少ないので、多くの場合、人も車もバイクもフェリーに乗って川を渡ることになる。

 

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 緊張を強いられるバイク旅を少し休んで、広々とした川を眺めながら船旅を楽しむ。人口過密なバングラデシュで人がいないのは川の上ぐらいだ・・・でもフェリーの上は例によって激混み。バスも車も人もぎゅうぎゅうに詰め込まれて、ゆっくりと進んでいくのだった。

 

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 12月16日はバングラデシュの戦勝記念日。1971年に起きた独立戦争でパキスタンに勝利した事を讃える祝日だ。町のイベントを見学していると、ペイント屋が僕の手にバングラ国旗と日本に国旗を描いてくれた。二ヶ国の国旗はデザインも非常によく似ている。「ジャパンとバングラはボンドゥー(友達)だ!」とよく言われるけど、バングラ人は本当に親日的だ。

 

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 バングラデシュを旅する人にぜひ覚えてほしいベンガル語が「シャモシャ・ナイ(問題ない)」だ。実際には、バングラデシュは何かと問題の多い国だけど、どんなときでも笑って「シャモシャ・ナイ!」と言っておけば、ものごとがよい方向に進むような気がする。


 

 

グルメは期待できないけど・・・

 バングラデシュは外食のしやすい国だ。インドだと田舎に行くとまともな食事ができるレストランがないこともあるが、それに比べるとバングラデシュは外食産業が盛んなので、食にあぶれることはまずない。

 味も決して悪くはないが、メニューのバラエティーはとても限られている。基本的には米と小麦粉という主食中心のメニューである。ビリヤーニ、ロティー、パロタ、サモサ。3週間程度の旅ならまだ良いが、何ヶ月も生活していると飽きてしまうだろう。

 

ba18-25660ビーフ・ビリヤーニは牛肉入りの炊き込みご飯。バングラデシュはムスリムの国なので、牛肉がごく普通に食べられている。少し硬いが肉の旨味がしっかりと感じられる。70タカ(100円)。うまい、安い、早い。三拍子揃ったバングラのファストフードだ。

 

IMG_6652漁港のそばにある食堂でロティと豆カレーを食べる。タンドール窯で焼かれたロティは風船のようにふっくらと焼きあがってとにかく美味!これで20タカ(30円)は安い。

 

IMG_6670今日のランチはサフランライスに目玉焼き(ポース)2個。卵はいつどこで食べてもハズレがないからいい。50タカ70円。

 

IMG_6718チキングリルとナンとハリームというカレー味のスープ。ハリームは羊の骨と肉のうま味が濃厚に感じられ、隠し味のパクチーとライムがほどよく効いている絶品だった。全部で190タカ(260円)。ちょっと贅沢なディナーだ。

 

ba18-13435もちろんバングラデシュにも洒落たレストランはある。なぜか高級な店はチャイニーズを出すところが多いようだ。特別感が出るからだろうか。300タカ(420円)のプレートセットには、焼き飯とフライドチキンが2個、チキンのカレー風味、野菜のあんかけ、ソフトドリンクがつく。味もいいし、ボリュームも十分だった。値段は高いが、その価値はある。