ときどき「プロのモデルが被写体でもないのに、どうして自然な笑顔が撮れるんですか?」と質問されることがあるのですが、そんなときは「自然な笑顔を撮るのは、決して難しいことではないんですよ」と答えています。

 確かに僕が旅先で撮っているのは、ごく普通の町にいる、ごく普通の人たちです。撮られることに慣れていない素人です。でも、撮られることに関しては素人だとしても、「笑顔の素人」なんてどこにもいない、と思うのです。

 普段、僕らは特になにも意識せずに笑うことができます。「口角を何度ぐらい上げて、目尻をどれぐらい下げよう」なんて考えながら笑う人はいませんよね。笑顔はごくありふれたものだし、練習する必要もない。人は本来、いつでもどこでも自然に笑うことができるはずなのです。

 ところがカメラを意識した途端に、笑顔が不自然になってしまう人がいます。いつもは自然に笑っているのに、他人の目を意識して「いい顔を作らなくちゃ」なんて考え始めると、笑顔がこわばってしまうのです。

 これは「歩くこと」によく似ています。人はいったん歩行という動作を身につけると、そのあとは特に何も意識せずに自然に歩くことができます。ところが、緊張した場面で「自分の歩き方」に意識が向いた途端に、今まで自然に動いていた体が急に不自然な動作を始めてしまう。右足と右手が同時に前に出たりして、ぎこちない歩き方になってしまうのです。

 つまり「自然な笑顔」とは、そのときのポジティブな感情が、余計な回路を通さずにそのまま表情筋を動かしている状態なのです。別の言い方をすれば、「自分が笑っているのを忘れているときに現れる表情」なのです。

 被写体に自然な笑顔になってもらうためには、撮影者が自然体でいるということが何よりも重要です。肩の力を抜いて、リラックスした状態でカメラを構えるのです。「今あなたを撮ることを心から楽しんでいる」という気持ちを全身からほとばしらせて、被写体に向き合うのです。

 無理に笑わせようとしなくてもいいのです。ピエロな自分を演出する必要もありません。あなたに会えて本当に嬉しい、という気持ちを持ってカメラを構えるのです。そうすればきっと、あなたにも自然な笑顔が撮れるはずです。

 

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旅人にとってインドという国は少々ハードル高めで、最初はいろんな事がうまく行かないかもしれないけど、懲りずに何度もトライして欲しい。噛めば噛むほど味が出てくる国だから。詐欺師の心配などせずに、リラックスして歩ける街を見つけられたら、こんな笑顔にいくらでも出会うことができる。

 

india19-49039インド西部グジャラート州で出会った渋イケメン。安い煙草ビリーを吹かして一服する姿にカメラを向けると、そのままの姿勢で少しだけ笑ってくれた。

 

india18-89005インド北部ラダック地方にある湖パンゴンツォのほとりに住む80歳のおじいさん。仕事を引退した後は、多くの時間を祈りに費やしているという。右手でマニ車を回し、左手の数珠で数をかぞえながら、お経を唱える日々だ。

 

india18-90396インド北部ラダック地方の村で出会った少女。ラダックに住むチベット系住民の顔立ちは、平地に住む多数派のインド人と違って、日本人と同じモンゴロイドの特徴を持っている。初めて会うはずなのに、どこか懐かしさを感じるのは、そのためだろう。

 

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インド原産のスパイスであるウコンには美肌効果もあるらしい。グジャラート州には結婚式直前の男女がお互いの顔や体にウコンを塗り合うという習慣があって、彼もすっかりウコンまみれになっていた。それにしてもすごい黄色だ。ミスター・ターメリックである。

 

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インド中部マディヤプラデシュ州で出会った笑顔。爽やかなイケメンが路地裏のチャイ屋でチャイを作っていた。時々は「渋くない系」だって撮るんです。

 

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インド西部グジャラート州で出会った少女の笑顔。インドは笑顔にあふれた国だ。

 

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学校帰りの小学生が立ち止まって笑顔を向けてくれた。インドの少女は髪を長く伸ばして三つ編みにすることが多い。

 

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インド西部グジャラート州で出会った下校途中の少女。色鮮やかなスカーフを巻いたムスリムの少女が、少しはにかんだ笑顔を向けてくれた。インドの街を歩くと、毎日いろんな笑顔に出会うことができる。

 

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訳あって、パナソニックのS1Rというカメラをお借りしています。50mmF1.4のレンズの描写力に驚き。フォーカスもシャープに合います。

 

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いいカメラといいレンズを手にすると、撮る意欲が自然と湧いてくるものですね。久しぶりに我が娘の笑顔を撮りました。F1.4のボケの世界がすごいです。