「Colorful Life 幸せな色を探して」三井昌志・著

写真集「Colorful Life 幸せな色を探して」を2分にまとめたPV動画が完成しました。色鮮やかに生きる人々の姿をご覧ください。

70億もの人が作り出すそれぞれの色

　幸せを感じると、人は笑顔になる。家族で食卓を囲むとき。友と語らうとき。困難な目標を達成したとき。愛する人と美しい夕焼けを眺めるとき。日常のさまざまな場面で、笑顔は自然に生まれてくる。

　笑顔は幸福のバロメーターだ。だからもし、笑顔の度合いを正確に測ることができれば、その人の、あるいはその地域の幸福度を推計できるはずだ。

　しかし、実際に笑顔の度合いを客観的に測るのは難しいし、それを比較するのはもっと難しい。顔で笑って心で泣いている人もいるかもしれないし、そもそもどんな表情が「本物の笑顔」なのか、はっきりと判定する基準もないからだ。

　というわけで、国際的な幸福度を測る試みは、経済状況や健康状態などの指標とアンケート調査に頼ることになる。そうした調査のひとつで、国連が出した「世界幸福度報告書2020」によれば、インドの幸福度は153ヶ国中144位という惨憺たる結果だった。（ちなみに1位はフィンランド、日本は62位で、最下位はアフガニスタン）

　インドをはじめとするアジア各国を旅するあいだ、僕は数え切れないほど多くの笑顔に出会い、それを写真に撮ってきた。もちろん僕が無理に笑わせているわけではない。人々はごく自然に、当たり前に、弾けるような笑顔を向けてくれたのだ。

　国連の報告書によれば、インドは「世界でもっとも不幸な国のひとつ」になるわけだが、僕の印象はまったく違う。インド人は世界でも指折りの笑顔の持ち主で、人生を楽しみ、カラフルな日常を生きている。

　なにも「インドは地上の楽園だ」などと言いたいわけではない。所得格差や女性差別など、さまざまな問題を抱えた国だ。一人当たりGDPや平均寿命は世界平均を下回っている。でも決して不幸な国ではない。

　幸せな色を探して、僕は旅を続けてきた。人が笑顔になる理由を知りたくて、辺境の地を走り回ってきた。

　20年に及ぶ長い旅の中で僕が知ったのは、人間が持つ根源的なたくましさと美しさだった。たとえ疫病や災害や経済危機に襲われても、人は働き、祈り、着飾り、そして笑うのだ。

　日常に色があふれ、光に満ちた場所がある。
　自分の仕事に誇りを持ち、どのような困難をも乗り越える強さを備えた人々がいる。
　70億もの人が作り出すそれぞれの色。それがこの世界を美しく彩っている。

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