質問:一人旅をするメリット
はじめまして、漠然とした質問があります。
テーマとしては自分が一人旅をするメリットの有無についてです。
以下についてYESであると推測されれば、自分の中でメリットと見做し、一人旅をしてみたいと思います。
また内容が漠然としてますが、推測可能者としてこれまでの質問履歴の拝見から三井さんの分析力の高さが伺えましたので、お手数ですがそのまま質問させて貰います。
質問
一人旅をする事で考え(人生観等)は変わりますか?
上記がYESの場合、それにより生きやすくなりますか?
生きやすさの定義は、日々の社会生活の中で起きる問題を自分で解決出来、更に自分にとって適当なポジションを見つける事を可能にするとします。
自分としては一人旅は多くの体験により自分自身を含む物事に対する客観的な解釈能力及び問題解決能力や対人能力を育み、それが生きやすさに繋がるのではないかと期待してます。
また長くてすみませんが自分語りを補足させて貰います。
自分の履歴として、約14歳から23歳までガチで引きこもりをしていました。
生活スタイルとしては基本はネットサーフィン・ネットゲーム・読書・音楽鑑賞・炊事手伝いが主となります。
しかしいずれは自立生活(金を稼ぐ)を送らなければなりません。しかし地頭と一般・専門知識と全てが欠如していた為か、自分では何も解決出来ませんでした。
(当時は外に出てアルバイト等をする事は心情的に出来ませんでした。アフィリエイトやオークション等をやりましたが、純利益は月のおやつ代程度でした。)
また中卒という学歴も気になりましたので、取り敢えずやる事が無い為高認を独学で取りました。しかし大学は行っておりませんし、予定も現在ありません。
現在は24歳で親から幸い稼ぎの可能性となる道を提供されまして、その為にとある資格学校へ通い勉強をしています。また簡単な事務的な手伝いをしています。
しかし問題点として、親から提供されたその道に非常に依存気味である事に不安を感じます。
つまり未だ自分の頭では何一つ解決出来ず、盲目の状態で学校に通っているのです。
長い引きこもり期間が視野狭窄にし問題解決能力や対人能力を育まず、社会適応能力たるものが明らかに欠如してるのではと感じてます。その証明として友達も一人もいません。
そこで引きこもり期から「たびそらHP」を度々拝見してまして、勉強の余暇に一人旅をしようか考えてました。
そこで最初の質問に舞い戻ります。
長くなりすみません。三井さんから見てどう思われますでしょうか?
自分が一人旅をしても時間と金の無駄か、それともメリットを感じるか・・・
よろしくお願いします。
三井の答え
26歳の時、僕が初めて旅に出たのは「自分にとってメリットがある」と思ったからではありません。ただ旅に出たかったから出た。それだけです。結果的には旅に出たことによって、今こうして写真家として暮らしているわけですが、旅に出る前の時点で「帰ってきたら自分はこうなっているはずだ」という予想などまったくできませんでした。
そもそもやる前から結果がわかっているようなものは「旅」とは呼べません。それはパッケージされた旅行商品です。何が起こるかわからないのが「旅」なのです。先が見えないから不安で、一人でいるから孤独で、しかしそれを乗り越えたときに得られる喜びは何物にも代えがたい。一人旅とはそういうものです。
旅に出て何かを得る人もいるし、何も得られない人もいるでしょう。それは一般化できるものではありません。少なくとも僕にとって26で旅に出たことが、その後の人生を変えるターニングポイントになった。でもそれが他の人にも当てはまるわけではありません。たまたま僕は旅との相性が良かったのでしょう。
しかしとにかく旅に出てみないことには何も始まらない。それは人生と同じです。まずはサイコロを振ってみないことには、どんな目が出るかわからないのです。
人生は一回きりです。失敗しても後戻りはできない。それがルールです。「メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットが多い方を選択する」というような判断ができないのが人生というものです。恋愛だって就職だって結婚だって子育てだって、およそ人生の重大事というのは、「やってみなきゃ結果はわからない」ってことばかりでしょう。
だからあなたのように「メリットがあればやる。なければやらない」なんて言っていると、結局何も決断できなくなってしまうのです。決断というのは理屈ではないのです。今の自分を変えられる勇気があるかどうかなのです。
あなたの一番の問題は「自分のことがわかりすぎている」ことです。いや、「わかった気になりすぎている」のです。だから「頭でっかち」でちっとも行動が伴わない。「○○は俺に向いていない」「○○をやるには能力が足りない」そんな言い訳ばかりして、結局何もしないまま時間だけが過ぎていったのです。
僕は何もわかっていなかったから、写真家になることができたのです。もし写真家になるのがいかに大変で、どれほど狭き門なのかがわかっていたら、やる前から諦めていたでしょう。何もわかっていない人間は恐れるものもない。「わかっていない」というのは若者の特権なのです。
あなたは自立できない理由を『地頭と一般・専門知識と全てが欠如していた為か、自分では何も解決出来ませんでした』と書いているんだけど、これはウソです。あなたは頭がいいし、ネットや本から様々な知識を得ている。けれど、それを使って社会に出て行動する勇気がない。どうしてかはわかりません。いじめられた経験があるのかもしれないし、対人関係でトラウマのようなものがあるのかもしれない。
とにかく、あなたにはちゃんと能力がある。その証拠にこうしてまとまった文章を書けるじゃないですか(少々くどくて理屈っぽいところはあるけど、言いたいことはきちんと伝わってきます)。
あなたは自分がバカではないことを知っている。それどころか心の底では周りの人間を見下してもいる。人一倍プライドが高くくせにひどく臆病で、失敗することを極端に恐れている。だから友達ができないんです。
そう、あなたは失敗するのが怖いのです。そりゃ失敗が好きな人間なんていませんが、それにしてもあなたの怖がり方は度が過ぎます。まるで無菌状態で育てられた子供が、ばい菌だらけの外の世界を恐れているかのようです。
あなたにも薄々わかっているはずですよ、自分自身の問題が。
今の頭でっかちで退屈な自分を、本当は変えたいんでしょ。
だから旅をしてみようと思ったんでしょ。
それは理屈じゃなくて、あなたの心の奥底から発せられたシグナルでしょ。叫びでしょ。
だったらそれに素直に従うべきじゃないかな。
あなたは一人旅に出るべきですよ。今すぐにでも。
予定を決めず、なるべく下調べもせずに、どこかの国に行ってきなさいよ。つべこべ言わずに飛んでみなって。
今のあなたを縛っているのは、あなた自身ですよ。そりゃ両親にも問題はあったかもしれない。学校にも同級生にも恵まれなかったかもしれない。でももう24歳なんだから、いつまでも過去にこだわっていても仕方ないじゃないですか。あなたができる最大の「復讐」というのは、社会とちゃんと関わりを持って生きられる一人前の大人になるってことなんだよ。
旅に出ることによってあなたの人生観が変わるか変わらないかは、僕にはわからない。それはあなた次第です。
でもね、少なくとも今のあなたの「行き詰まり」状態を打開するひとつの手にはなると思う。
なぜなら、旅では必ず失敗するからです。あなたがもっとも恐れている失敗が、旅では心おきなくできるのです。どうです、素晴らしいでしょう?
あぁ「失敗するぐらいなら、家に引きこもっていた方がマシだな」なんて思わないでね。旅先の失敗なんてたいしたことないんだから。別に人生を左右するわけではない。騙されたり、ボラれたり、道に迷ったり。そういう「プチ失敗」の経験をたくさん積んでくればいいんです。そうしたら「失敗のひとつやふたつ、たいしたことないんだな」ってことがわかってくるから。
人生はロールプレイングゲームではありません。経験値を上げてレベルアップして戦闘能力が上がればサクサクッとクリアできるというような単純なものじゃない。不安にさいなまれたり、もがいたり、無駄な回り道をたくさんしながら、不格好に進んでいくものです。あなたはすでにずいぶん遠回りをしてきたけど、それだっていつの日か「あれは必要な回り道だったんだ」って思えるときが来るはずです。
大切なのは、その小さな部屋の中で「ああでもない、こうでもない」と考えを巡らせることではない。自分の足で歩き出すことです。
今のあなたにはそれができるはずです。なにしろもうすでに「たびそら」を読んでいるんだからね。
健闘を祈ります。
よい旅を。