長旅を終えて日本に帰ってきてから、再び携帯電話のない生活をはじめた。2年前にiPhoneを買ったのは、リキシャで日本を一周するために必要だったからだ。そのあとも2年契約の縛りのために一応は持っていたのだけど、その契約もこのあいだ終わったので解約したのだ。スマホ全盛のこの時代に完全逆行しているけど、実際それで不都合なことなんて何もなかったりする。
 
 それから、洗面所の電灯をLED電球に変えた。今までは電球型蛍光灯を付けてたんだけど、だいぶ古くなってきたので、点灯直後が暗くなっていたのだ。LED電球は40W相当タイプのものがアマゾンで878円で買えた。ずいぶん安くなったものだ。
 
 そういえばネパールの農村で使われている電灯は、ほとんどが電球型蛍光灯に置き換わっていた。村の小さな水力発電機や太陽光パネルで作られる電力には限りがあるから、効率の悪い白熱電球なんてもったいなくて使えないのだ。中国製の蛍光灯がものすごく安くなったことも理由のひとつだ。
 
 旺盛な需要に応えて拡大し続けてきた電力供給が、原発の停止で頭打ちになり、どうしたらいいんだと悩んでいる今の日本。でもネパールのように最初から「エネルギーは有限で、その中で何とかやりくりするものだ」って意識があれば、そんなには困らない。極端な話、電気が止まれば月を見て寝てしまえばいいんだから。
 
 もちろん日本がネパールのようにつつましい農業国になればいいとは思わない。僕自身、ITとそれを支える巨大プラントの恩恵を受けている。でも、自分が食べている物や使っているエネルギーが、自分の手からあまりにも遠く離れてしまっている現状には強い違和感を感じる。
 
 だから太陽光や風力発電には(エネルギー効率には改善の余地があるにしても)親しみを感じる。天候や風に左右される不安定さも、「工業」というよりもむしろ「農業」に近くて好ましい。分相応というか身の丈に合ったエネルギー源だって気がする。
 


薄茶色の瞳が印象的なネパールの少女。
 

ダヒ(ヨーグルト)を攪拌してギウと呼ばれる精製バターを作っているおばさん。ネパールでは、こうした昔ながらの道具を今も大事に使い続けている
 

孫をおんぶしているおばあさん。ネパールの農村でよく見かける光景だ。
 

ネパールの農村で出会った少女。派手なバンダナの図柄が「第三の目」みたいに見える。
 

ネパールで出会った赤い服の少女。