新宿のエプサイトで行われている、野町和嘉さんの写真展と講演会に行ってきました。
 
 野町さんは日本を代表する写真家。ナイル川流域の部族を撮った写真集「ナイル」や、イスラムに改宗してまで撮影した聖地メッカのカーバ神殿などは特に有名です。
 
 その野町さんが最近取り組んでいるのが南米です。ボリビアやペルーなどのアンデス山脈に住む人々を撮影しています。
 
 侵略と虐殺と略奪とキリスト教への改宗と移民の大陸。荒々しい歴史と、切なさを感じる人々のたたずまい。僕が旅しているアジアとは全く違う風景がそこにはありました。
 
 講演が終わった後、「野町さんはデジカメでは撮らないのですか?」という質問に対して、「最近はデジタルでも撮っています。あと数年でフィルムは使わなくなるのでは」と答えられていたのが意外でした。
 
 今回の写真展に展示してあった作品も、全て35mmのフィルムで撮ったものだし、野町作品に特有の少し暗めの粘っこい色というのは、デジタルカメラが最も不得意としているものだったからです。
 
 自分の「色」に徹底的にこだわる野町さんが、「いずれフィルムは使わなくなる」と言う。その言葉にはひどく重みがありました。
 
 僕なんかずっとデジタルカメラしか使ってこなかったから、フィルムの行く末にはあまり興味がないし、コスト面を考えるとどうせフィルムに戻れるわけないと思っているのですが、何十年もの間フィルムで撮り続けてきた写真家もまた、デジタル化の流れは不可避だと言っているのです。
 
 どうやらこの流れは、思っている以上に加速しているようです。