僕がカメラを向けるのは、決して特別な人ではない。ごく当たり前の日常の中で、ごく当たり前に働いている人々に、なぜか心惹かれるのだ。シャッターを切りたくなってしまうのだ。
 


真っ赤なトウガラシはスパイシーなインド料理に欠かせない食材だ。市場には大量のトウガラシを天日干しする男たちの姿があった。
 
ラジャスタン州の牧民が水牛を連れて草地に向かう。ぐるぐる巻きにした真っ赤なターバンは強い日差しを遮るのに役立つという。
 

積み上げた稲藁の上に座って一休みする男。ワラは牛のエサにする。
 

貨物列車で駅まで運ばれてきたセメントをトラックに積み替えている人夫たち。全身埃まみれで真っ白になって働いている。過酷な労働の現場だが、陽気な笑顔が印象的だった。
 

パンジャブ州にあるレンガ工場はとても高くて立派な煙突を持っていた。働く人の姿と対比させると、煙突の巨大さがより際立つ。
 

ラジャスタン州北部に広がる砂漠地帯で植樹をする女たち。木を植えることで、砂嵐による砂漠化の進行を防ごうという目的で行われている公共事業だ。
 

セメント工場で働く男たち。セメントの粉がもうもうと舞う中、奇妙なかたちのマスクを着けて働いていた。
 

グジャラート州の小さな町に、真鍮(銅と亜鉛の合金)の水瓶を作る工房があった。
トンテンカントン、真鍮を叩く音が町に響いている。板をハサミで切断し、炉で熱して柔らかくしてから形を整えていく。叩いてやることで、強靱さが増すのだ。
 

古い足踏み式ミシンを操る仕立て屋の婦人。孫娘と話しながら、のんびりと仕事をしている。
 

染色工場で働く男。綿糸を洗剤で洗い、固く絞ってから化学染料につけ込む。腕の力だけが頼りの男の仕事場だった。
 

素焼きの水瓶を作るオリッサ州の男。木のヘラでポクポクと叩いて、形を作っていく。それにしても、いい体しているなぁ。
 

造花の花束を自転車で売り歩く男。いかめしい顔つきと売っているもののファンシーさのギャップがたまらない。
 

村の外れにある井戸で水を汲んでいる少女。水汲みは子供たちが任される最初の仕事でもある。