1億6000万人もの人口を擁する過密国家バングラデシュは「マンパワーの国」だ。どんな仕事でも人手(特に男性の力)に頼っている。
バングラデシュの労働者は痩せていながらも筋肉質の「細マッチョ」な人が多い。余分な肉が付くような豊かな暮らしは送っていないのだろう。
男たちは日々、自分たちがやるべき仕事を淡々とこなしている。その生き様が彼らの顔にも表れている。
第二の都市チッタゴンにある製塩工場で出会った男。日々の仕事で鍛えられた体と、鋭い目つきに釘付けになった。
「そこのあんた、リキシャに乗っていかないか?」バングラデシュの首都ダッカを歩いていると、よく声を掛けられる。リキシャ引きはその脚力だけでこの街を生き抜くタフな男たちだ。彼らの生き様が顔にも表れている。
駅に停車している列車からぬっと顔を出して、タバコの灰を窓の外に捨てていた男。白髪交じりのヒゲが素敵だった。
トウガラシやターメリックなどのスパイスを粉に挽く工場で働く男。スパイスの微粒子が空中をふわふわ漂っているスパイス工場は、クシャミと咳が止まらなくなる刺激的な場所だった。
川沿いに大量の丸太を並べた製材所で働く男。巨大な丸太にワイヤーを引っかけ、ウィンチを巻き上げて川岸の上の工場に引っ張り上げる。川の多い国バングラデシュでは、大きくて重い木材は船で運ばれることが多い。
上半身裸で働く工場労働者のつかの間の休息。腰にルンギーを巻いただけの軽装で、午後も働き続ける。
小さな町工場で、旋盤を使って金属加工を行う職人。汚れた手と味のある顔立ちが渋かった。
鉄の角材のゆがみをハンマーで叩いて直す職人。微妙なゆがみを目で確認して修正するのが彼の仕事だ。
鍛造工場で働く男。男の背後にある巨大な機械で鉄を叩いて成型していく。
首都ダッカの旧市街で出会ったのは10個ほど重ねたブリキのバケツを頭に載せて運ぶ男だった。人力に頼った国バングラデシュでは、いたるところで「運び人」たちの姿を目にすることができる。