インド北部ラダック地方の住民の多くはチベット仏教を信仰する仏教徒だ。各地で見かけるゴンパ(寺院)とタルチョ(旗)とチョルテン(仏塔)は、この地の仏教文化の象徴で、澄み切った青空と乾いた大地によく映えている。
ラダック地方を旅していると、青空のまぶしさに圧倒される。海抜5359mにある峠・カルドゥンラには、無数の旗(タルチョ)がはためいていた。経文が印刷された五色の旗は、ここを通る旅人の安全を祈って結びつけられたもの。青は空、白は風、赤は火、緑は水、黄は地を象徴している。
ラダック地方にあるチェムレ・ゴンパは、岩山をまるごと僧房で埋めつくしたスケールの大きな僧院。荒々しい岩肌と白く塗られた僧院の壁とのコントラストが美しい。どの角度から見ても絵になるゴンパだ。
インド北部ラダック地方を旅していると、青空と岩山と寺院が織りなす雄大な景色に圧倒される。レーから20kmほど離れた場所にあるティクセ・ゴンパも朝の光を受けて白く美しく輝いていた。スピーカーを通じて朝の勤行の声が辺り一帯に響いていた。
ラマユル・ゴンパは荒々しい岩山の上に建てられたラダックを代表する僧院のひとつだ。16世紀頃に建立され、1834年に徹底的に破壊されたが、そのあと今の姿に再建された。ゴンパはどれも人が住むのも難しい土地にばかり建てられている。ゴンパを建てること自体が、信仰に対する試練なのだろう。
ラダック地方の仏教寺院の壁面によく描かれている「六道輪廻図」。仏教では、生きとし生けるものは六道(天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)で輪廻転生を繰り返すと考えられていて、悟りを開いてこの輪から解脱することが目的とされている。地獄や餓鬼の世界はやけに生々しく描かれている。
崩れかかったチョルテンの白さに目を奪われる。チョルテンとは高僧の遺物などを収めた仏塔のこと。石を積み上げてから漆喰で固め、石灰石を水で溶いた塗料で白く塗装している。作られてから何世紀も経ち、徐々に形が崩れていく様は、諸行無常を感じさせる。
農村で出会った女性は、スコップを手にセメントを練っていた。近く行われる法要のために、小さなチョルテン(仏塔)を作っているという。仏教に篤いラダックの人々は、こうした手作りのチョルテンをあちこちに作っている。
ヌブラの村で、女たちがツァンパを作っていた。ダライ・ラマ法王が説法を行うというハレの日を祝うために、村中の女たちが集まって食事を作り、説法の会場へ向かう巡礼者に振る舞うのだという。おにぎり大のツァンパはずっしりとお腹にたまり、その後何時間も空腹を感じなかった。
ヌブラの村で出会った老人がマニ車を回していた。マニ車の中には経文が納められていて、回転させるとお経を唱えたのと同じ御利益があると信じられている。老人の顔に刻まれた深い皺に、この土地で生きていくことの厳しさを見た。
インド北部ラダック地方の村で出会ったおばあさんが手に持っている数珠は、いつも肌身離さず持っているもの。唱えたマントラの数をかぞえるために使っているという。数珠は108玉あり、一周まわると108回マントラを唱えたことになる。