またコルカタの詐欺師(かもしれない人)に関する情報が寄せられた。日本語が話せるビジネスマンから「インド製のカシミヤやシルクの布を買って、それを日本のオンラインショップで売る」という商売を持ちかけられた、というのだ。彼はすでにその話に乗っていて、インドから布が届くのを待っているという。

 17万円相当という布の代金は後払いで、布もまだ日本に届いていないので、現時点で詐欺だと断定はできない。しかし「限りなく黒に近いグレー」だとは思う。その日本人はカシミヤやシルクのことを何も知らない素人だという。そんな彼に高価な布地を預けて売るようなリスクをインド人が冒すだろうか?

 僕は彼にこうアドバイスした。『くれぐれもご自分が「人柄を見抜ける」とは思わないことです。吟味すべきは相手の人柄ではなく(そんなものは誰にもわかりません)、状況です。自分が置かれた状況がヤバいと思ったら手を引いてください。僕から言えるのはそれだけです』と。

 僕はインドの詐欺対策の専門家ではない。にもかかわらず、コルカタの詐欺師グループについてのブログ記事を書いて以来、様々な詐欺被害の報告が寄せられるようになった。それを読むと、詐欺師には「わかりやすいパターン」があることに気付く。

1.インド初心者が行きがちな安宿街、土産物屋街で声を掛けてくる。
2.日本語がペラペラで、日本の思い出話をして、旅行者を安心させる。
3.チャイやご飯をご馳走してくれて仲良くなる。
4.そのうえで「ガヤの実家に行こう」だとか「布や宝石を買わないか」といった本題を切り出してくる。

 詐欺が成功するまでけっこう手間がかかるというか、気の長い話なのである。1~3の段階で逃げられることも多いはずだ。それでも何百人、何千人にもアタックし続けるのは、「当たったときの実入りがデカい」からなのだろう。ガヤには日本人を騙し続けたお金で建てた詐欺師の豪邸があるという。

 上手い詐欺師はいきなり金の話はしない。まず仲良くなって、信頼関係を築いてから、巧妙な手口で金を巻き上げてくる。警戒感を解かせる巧みな話術を持っている。だからインド初心者は1~3の段階、つまり「日本語ペラペラでチャイをご馳走してくれる良い人」には絶対に着いていかないのが正しい対処法だ。

 

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 詐欺師は「騙せそうな人間」を選んで声を掛けている。誰彼構わずアタックしているわけではないのだ。僕も26歳のインド初心者だった頃には、コルカタやデリーでよく声を掛けられた。今は全くない。良くも悪くも「初々しさ」が薄れて、「旅慣れた感」が出ているのだろう。面倒がなくていいが、ちょっと寂しい気もする。でも、もう20年前には戻れない。

 初めてインドに来た20代の若者の中には「インドを一人旅している俺スゲェー」と思っている人もいるかもしれない。そして「そんな特別な俺には、現地のインド人と仲良くなれるような幸運が訪れるのも当然」なんて思ってしまう。そんな心の隙を詐欺師は巧みに突いてくるのだ。

 そんなあなたは、詐欺師から見れば「一人旅の緊張感と高揚感で正常な判断能力を失ったカモ」でしかない。この現実を直視しよう。そして「インドを一人旅している日本人なんていくらでもいるし、その中で他でもない自分に声を掛けてくる理由はカネ以外にない」と冷静に判断できるようになろう。

 僕は「普通のインド人は優しくて、チャイをご馳走してくれる親切な人々だ」と言いながら、一方で「インド初心者は観光地や大都市でチャイをご馳走してくれる男には注意せよ」と口を酸っぱくして言い続けている。それもこれも「観光地や大都市に住み、旅行者に言い寄ってくるインド人は異常」だからだ。

 僕がそのような結論に達したのは、バイクで旅行者が全く立ち入らない「普通のインド」を旅するようになったからだ。それまでは「観光地で声を掛けてくる怪しげなインド人」が、インド人のスタンダードだと思っていた。しかしそれは大きな間違いだった。観光地を一歩離れると、本当に素敵なインド人に出会えるのだ。

 観光地には(彼らから見れば)お金持ちの外国人がたくさん歩いていて、そいつらを上手く騙せればいい収入になるから、詐欺師が集まってくる。しかし観光地を離れると、どこにも外国人なんていないから、詐欺師もいないし、穏やかで親切な「素顔のインド人」ばかりと出会うことになる。

 実際のところ、僕がインドで出会うのはとても親切で正直な人ばかりだ。そしてそういう人々を僕は写真に撮り続けている。でも、観光客がよく立ち寄る観光地と大都市で親しげに声を掛けてくる人は、ほとんどの場合何らかの企みを持った人なのだ。このギャップがあまりにも大きいのが、インドという国の特徴なのである。

 

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