インドは古い道具を大切に使い続ける国。修理しながら、50年も60年も同じ機械を使って仕事をする人も少なくない。
 中でも特にインドらしい機械が「足踏み式ミシン」だ。構造がシンプルなので故障してもすぐに直せるし、停電しても使い続けられるという利点ゆえに、電動ミシンがこれだけ普及した今でも現役で活躍しているのだ。

 

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こうしたインドの古い足踏み式ミシンを見ると、つい写真に撮りたくなってしまう。何十年も前から同じミシンを踏みながら、静かに年を重ねていく人々。悠久の時の流れはガンジス川だけじゃなくて、こんな街中の古びた仕立て屋の中にも感じることができる。

 

india19-58840一畳にも満たない狭い店で、古い足踏み式ミシンを使う仕立て屋の男。狭いながらも一国一城の主という感じで、マイペースで仕事をしていた。インドの旧市街にはこうした零細自営業者が数多くいる。

 

india19-59449トヨタ製のミシンを愛用しているインドの仕立て屋さん。世界的自動車メーカーであるトヨタは、70年以上前からミシンを作り続けていたが、2019年に業績不振を理由にミシン製造から撤退した。それでも「TOYOTA」ブランドのミシンは、今後何十年も修理しながら使われることだろう。

 

india20-89699インドには古い足踏み式ミシンを使う仕立て屋が多いので、ミシン専門の修理屋さんもあちこちにある。自分が生まれるよりも前から使われているミシンを丁寧に修理して、また何年も何十年も使い続けるのだ。

 

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古いミシンを使って枕を作っている職人。布を袋状に縫ってから、後ろに積まれた綿を詰めれば完成だ。インドの枕は綿をぎゅうぎゅうに詰め込んだ硬めのものが主流だ。

 

india18-85108インド北部カルギルの街で出会った布団打ち職人がなにげにイケメンだった。古い布団から綿を出し、ふかふかになるようにほぐしてから、布団に詰め直して縫う。そんな仕事を毎日実直に続けている。

 

india19-60399インド西部グジャラート州で出会った布団打ち職人。長年使われた布団から綿を取り出し、柔らかくほぐしてから新しい綿を入れて、ふかふかのお布団に仕上げてくれる。綿花の生産量世界一のインドでは、こうした綿が安く手に入るようだ。

 

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インドには炭火を使ったアイロンを使う職人がいる。重厚な鉄製のアイロンに熱した炭を入れて、その熱と重みでシャツやズボンをアイロンがけするのだ。古い道具を大事にするインドらしい光景だった。

 

india19-59043インド西部グジャラート州で出会った街のクリーニング屋さん。インドの街には洗濯やアイロンがけを安い値段で請け負う専門店がたくさんある。日常の何気ない所作が絵になる職人だった。

 

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かつては炭火アイロンが主流だったインドでも、今はほとんどが電気式になっている。格段に扱いやすくなったとは言え、今でもアイロンがけは腕力が必要な仕事だ。長年この仕事で飯を食ってきた職人の腕は、節くれだっていて筋肉質だった。