ついに世界遺産に登録されたバガン遺跡

 2019年7月。世界三大仏教遺跡のひとつバガン遺跡が、ついに世界遺産に登録された。以前から世界遺産にふさわしい規模と歴史がありながら、登録が見送られていたバガン。ようやく念願が叶ったようだ。まだアンコールワットよりも知名度は低く、訪れる外国人観光客も多くはないので、バガンを訪れるならできるだけ早い方がいいかもしれない。

 2018年11月にバガンを訪れたときにも、まだミャンマーらしい素朴な温かさはそこかしこに残っていた。もちろんミャンマー随一の観光地なので、この数年で旅行者が急激に増え、それに伴って新しいホテルやレストランが次々に建設されているのだが、町の人々からは商売っ気を抜きにした純朴な親切さを感じることが多かった。

 現在、バガン観光の「足」になっているのが「E-Bike」。中国製の電動バイクだ。安全のため自転車ぐらいのスピードしか出ないが、広範囲を楽に動き回れる乗り物としてすっかり定着している。1日6000チャット(420円)程度でレンタルすることができる。50km程度走れるバッテリーが積んであるそうだ。

 

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 馬車や自動車でも遺跡巡りはできるが、個人旅行者には絶対に電動バイクがオススメ。ラクだし、遺跡との一体感もあるし、未舗装の細い道だって進むことができる。

 

my18-20574バガンの遺跡巡りは楽しい。バガンには3000ものパゴダや寺院があると言われているが、いくつかの有名パゴダを除けば、訪れる人もまばらで、静けさの中でじっくりと遺跡と向き合うことができる。写真はタヨウピェー寺院。刈り取った草を頭に乗せた農家の女性が通り過ぎていった。

 

my18-2095913世紀に建てられたというゴードーパリン寺院の境内で、2匹の猫が遊んでいた。仲良くじゃれ合っているかと思えば、急に威嚇して追いかけてみたり。猫の気分はすぐに変わるが、寺院は何百年もずっと変わらずにそこに在り続けている。

 

my18-20719世界三大仏教遺跡のひとつバガンには、3000ものパゴダ(仏塔)や寺院が林立している。外観はもちろんのこと、内部も見応えがあるものが多い。人工の照明のない薄暗いパゴダの中に入ると、大きな石仏が穏やかな表情で見下ろしている。光と闇のコントラストが美しい。

 

my18-20412バガン遺跡には朽ち果てたもの、崩壊した壁がそのまま放置されているものも多い。まさに「兵どもが夢の跡」。世の無常を感じさせる光景だ。

 

my18-20173赤レンガの隙間から雑草が伸び、壁面が少しずつ剥がれ落ちていく。アンコールワットほどじゃないけど、バガン遺跡にも「ラピュタ感」が満ちている。そこにかつて文明が栄え、そして滅んでいったという栄枯盛衰の物語がある。

 

my18-20738ダマヤンジー寺院は雄大で力感溢れるフォルムが魅力的なお寺。中米のピラミッドみたいでカッコいい。

 

my18-21053バガンの空に夕陽が沈んでいく。すべてのものがシルエットに切り取られる瞬間だ。バガンでは2016年8月に起きた地震で、多くの遺跡に損害が出た。その影響で、ほとんどのパゴダが登楼禁止になり、旅行者は日の出と日没を楽しめるスポットを探すのに苦労している。

 

 

マイ・パゴダを探して

 バガン遺跡を訪れるのは、今回で3回目だったけど、新鮮な驚きを感じながら撮影できたのは、前回からずいぶん間があいていたから。10年も経てばたいていのことは忘れてしまうし、忘れることでまた好奇心が蘇ってくる。

 人気のあるパゴダをひと通り見て回ったら、あとは細い道を奥へ奥へと進んで、お気に入りの「マイ・パゴダ」を見つけて欲しい。規模は小さいながらも、フォルムが美しかったり、朽ち果て方が心に響くような「知られざるパゴダ」がきっと見つかるはずだ。

 

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my18-20885「こういうの、なんかいい」ってシャッターを切った。10年前の自分には、きっと撮れなかった写真。

 

 バガン遺跡はこれだけの規模を誇るのに、2019年まで世界遺産には登録されていなかった。1990年代に当時の軍事政権が登録を申請したことがあったのだが、展望台やゴルフ場が造られたことを理由にユネスコが却下したという。非民主的な政府が支配していたことも、登録見送りの理由だったのかもしれない。

 ミャンマーのホテル代は2年ほど前がピークで、今は値下がり傾向にある。1年前に比べても、1割から2割安くしているところが多い。観光客の急増を見込んでホテルの建設ラッシュが進んだものの、ロヒンギャ問題などで外国人観光客が減り、価格競争が激化しているのだ。人気の観光地であるバガンでも、それは同じ。ミャンマーに行くなら、今がチャンスかもしれない。