ホームページの大幅リニューアルに伴って、過去の旅行記のブログ化を進めています。今回は2004年の旅行記のリニューアルを完了しました。
今までの旅行記を単にブログに移植するだけだとつまらないので、新しい写真を追加し、画質もアップさせて、2016年時点でも十分に読み応えのあるものに仕上げました。
2004年の旅では「自分が写真家として生きていけるのかどうか」を見極めるつもりでした。僕にとって初めての写真集「アジアの瞳」を出版したことで、一応「写真家」という肩書きを名乗りはじめたのですが、内心では「自分はまだまだ本物の写真家ではない」と感じていました。写真を専門的に学んだこともなければ、仕事として撮影をした経験もない自分が「写真家」と名乗るなんておこがましい、という気持ちが常に心のどこかにあったのです。
確かに2001年の旅では、印象的な写真を何枚か撮ることができました。でも、それは様々な幸運が重なり合った結果に過ぎなかった。はっきり言えば「ビギナーズラック」だった。
「たまたまの幸運」を「本物の力」に変えるために、もう一度旅をする。そして今度こそ「自分の実力でつかみ取った一枚」を撮ろう。そう心に決めて、僕は旅立ちました。
どんなチャンスも逃すまいと、大きく目を見開いて町を歩きました。どのような角度で被写体に向き合えばいい表情になるのか、いい光が得られるのかを常に意識しながらカメラを構えました。
そんな日々の中で、「この世界には無限のシャッターチャンスがあり、撮るべきものはいくらでもある」ということに気付きました。本物の写真家になるために必要なこと。それは無限の可能性のうちどれを選び取るかという「取捨選択の目」を鍛えることであり、目の前の現実をどのように切り取るかという「想像力」を養うことなのだとわかったのです。
空が青すぎる国・アフガニスタン
2004年の旅のハイライトはやはりアフガニスタンです。なによりも強調しておきたいのは、アフガニスタンが美しい国だということ。特に山岳地帯の澄み切った青空は今でもしっかりと目に焼き付いています。
内戦、貧困、テロといった話題しか聞こえてこない国ですが、決してそれだけではありません。厳しい自然とたくましく生きる人々とが織りなすドラマがある。自らの生きる姿勢をしっかりと顔に刻み込んだ、存在感のある人々が暮らしているのです。
僕がバーミヤンには住めません。ここで生活していける強さは持っていないから。だからこそ、僕はバーミヤンに暮らす人々に憧れを抱くのだと思います。自分にはない美しさと逞しさを持った人々に、強く惹かれるのです。
美少女の国・ネパール
もうひとつのハイライトはネパールです。ネパールが特に美少女の多い国だという評判はあまり聞かないのですが、なぜかこのときの僕は行く先々で美しい少女に出会うことができました。ただ顔立ちが整って美しいというだけではなく、表情が実に生き生きとしていて、瞳が宝石のように光り輝いていたのです。
今の自分には、もう撮ることができない写真です。12年前に比べると、技術的にも装備の面からも明らかに向上しているにもかかわらず、あのときのような意気込みで少女たちを撮ることはできない。それは意欲、モチベーションの問題です。当時はセンサーが鋭敏に少女の表情に向けられていた。それが結果的に写真集「美少女の輝き」へと繋がっていくわけです。
旅を重ねるごとに、カメラを向ける対象、意欲が湧く被写体は移り変わっていきます。僕の場合、まず「笑顔」を撮りはじめた。それが「少女」になり、次に「働く人」になり、それから「渋イケメン」へと繋がっていきます。
これから先、自分がどんなものを撮るようになるのかはわかりません。今とはまったく違うものに興味を抱くかもしれない。
いずれにしても、大切なのは自分の感覚に素直に従い、まっすぐな気持ちで被写体に向き合うこと。そうしていれば、自然と答えが浮かび上がってくるのだと思います。