福岡を訪れたのは6年ぶりのことでした。2010年に「リキシャで日本一周の旅」を行っていたときに滞在して以来です。今回は福岡アジア美術館での講演会と、帰国報告会&写真教室を行うために福岡に飛びました。

まず驚いたのはLCCの安さ。成田・福岡が片道たったの5500円なのです。今回は往路がピーチ、復路がジェットスターを使いましたが、どちらも出発の2ヶ月ぐらい前に予約したら、この値段でした。すごいですよね。一気に九州が身近な場所になりました。
 

成田空港の搭乗口では、不思議な光景を目にしました。我々の隣のゲートで、ケージに入れられた犬たちが飛行機に乗り込もうとしていたのです。これはANAが企画した『ワンワンフライトin北海道』というツアーの第1便だったらしく、マスコミを入れて大々的なセレモニーを行っていました。

面白かったのは、登場の際に愛犬の名前をフルネームで呼んでくれるというサービス。
「山田ラッキーちゃん、吉本ジャスミンちゃん、真田プリンちゃん、平田あんこつばきちゃん・・・」
などなど、まぁ犬なんだから当たり前だけど、キラキラネームのオンパレードです。それにしても「あんこつばきちゃん」ってインパクトあるよなぁ。

ちなみに二泊三日のツアー料金は大人2名・犬1匹で22万2000円だそうです。普通の感覚からすれば高価だけど、すぐに売り切れになったとか。ワンちゃんのためなら出費は惜しまないという人はたくさんいるんですね。インドの野良犬とは違うんだなぁ・・・。

福岡空港が便利なのは、地下鉄に乗れば空港から街の中心までわずか10分で行けること。福岡は日本の主要都市の中でもずば抜けて空港からのアクセスがいいんですね。成田とは大違いだ。

天神周辺をぶらぶら散歩してから、そのまま湾岸地域まで行きました。ポートタワーというありがちな展望台のそばに「福岡免税店」という店があって、そこに中国人観光客が押し寄せていました。いわゆる「爆買いツアー」だけを狙ったという店で、店内は100%中国語だけという異空間でした。
 

韓国や中国と地理的に近い福岡は、最近急激にアジアからの観光客が増えているとのこと。東アジア以外では、ネパール人がとても多いんだそうです。学生ビザでやってきたネパール人がそのまま定住するパターンが多いようですね。

今回泊めていただいたのは、インド哲学が専門の山口さんのお宅。研究のためにインドに2年ほど住んでいた生粋のインド好きで、インド滞在中になんと4回もマラリアに罹って生死の境をさまよったという凄まじい経験をお持ちの方です。当時はグジャラート州でもマラリア感染の危険があったのです(今はオリッサ州の山奥などを除いて、マラリアの危険はかなり少なくなっています)。

5月21日は福岡アジア美術館で講演会を行いました。アジア美術館はアジアの近現代美術だけを専門に集めているという世界でも例のない美術館で、はっきり言ってかなりマニアックな施設です。僕のような現代アートに疎い人間から見れば「なんじゃこりゃ」と首をかしげてしまうような展示もあるけれど、作家それぞれのお国柄がはっきりと出ていて面白い。中国系のアーティストには表現の自由を訴えるメッセージを込めた作品が多いし、モンゴルのアーティストは大自然をテーマにした作品が多い。ミャンマーの作家は色使いが明快だし、インドの作家は深い内省を感じさせる作品が多い。

常設展の最後に出会ったのが、バングラデシュのリキシャアーティスト・アフメッドさんの作品です。実はこのアフメッドさんは僕が日本一周の旅で使ったリキシャにも絵を描いてくれた人なのです。なんともいえない懐かしさがこみ上げてきました。楽しいことばかりではない過酷な旅でしたが、あの辛い道のりを支えてくれたのが、アフメッドさんの絵だったのです。

アジア美術館では毎年5月に「福岡ミュージアムウィーク」という催しの一環として講演会を開いているのですが、その顔ぶれがすごいのです。横尾忠則さん、デヴィ夫人、森村泰昌さんといったそうそうたる顔ぶれに、なぜ僕が加わることになったのかは謎なのですが、リキシャという乗り物が僕を呼んでくれたんじゃないかと勝手に推測しています。

「美しきアジア」というテーマで2時間のトークを行い、そのあとサイン会も行いました。やはり女性に人気なのは「渋イケメンの国」。こんな男は日本にはいないのよ、という嘆きがあちこちで聞かれたのでした。

翌日の22日は博多にあるネパール料理屋「マイティガル」で帰国報告会と写真教室を行いました。全国4都市を巡る「報告会ツアー」の第一弾です。

マイティガルはネパール出身のオーナーシェフ・クマルさんが切り盛りするお店で、優しい味のネパールカレーやモモなどが楽しめます。日本人の奥さんと結婚して3人の娘を育てたクマルさんは、白髪交じりの長髪をポニーテールにしたマイク眞木のような外見で、なかなかの渋イケメンでした。

帰国報告会はお客さんとの距離がとても近いアットホームな雰囲気の中で行いました。九州で初めて開く帰国報告会ということで、宮崎県や熊本県、山口県などから遠路はるばる来てくださった方もいて、とても感激しました。写真教室、親睦会も含めると10時間ぐらい喋りっぱなしでしたが、充実感でいっぱいでした。

最近、僕の講演会に参加された方から「まるで新作落語を聞いているようだった」という感想をいただくことがあるのですが、大いに笑ってくださったということだと思うので、こういう感想は嬉しいですね。僕自身は落語というよりも「デジタル紙芝居」を上演する弁士のような気持ちで臨んでいるのですが。

お客さんの反応がダイレクトに返ってくるというのは、紙媒体やWebメディアにはない、ライブならではのもの。
これからも東京、名古屋、大阪と報告会ツアーは続きます。お楽しみに!