プロペラ機でダッカへ
ミャンマーの旅を終えて、バングラデシュへ向かった。
ヤンゴン国際空港発ダッカ行きのビーマン・バングラデシュ航空機は、まさかのプロペラ機だった。国際線なのにプロペラ。需要が低いってことなんだろうけど。
機内食が「りんごまるごと一個」というアバウトさも素敵だった。
そこは見渡す限り、男の世界
3年ぶりのダッカは強烈だった。もう十分に知っているはずなのに、恐るべき人の多さと、絶え間ない騒音と、ゴミと排泄物の山にたじろぐ。そして圧倒的なエネルギーの渦の中に巻き込まれながら、一歩を踏み出すのだ。
バングラデシュは面白い国だ。でも万人にお勧めはできない。インド以上に旅人を「選ぶ」からだ。あまりにも人口過密で、過剰にフレンドリーで、ウザい。あらゆる意味で日本とは対照的な場所。そういう所にあえて行ってみたい人だけが目指すべき旅先だ。
ミャンマーは「女の国」で、バングラデシュは「男の国」。市場に行けば、そのことがすぐにわかる。
ミャンマーの市場にはおばちゃんたちの笑い声が響いているが、バングラデシュの市場には見事に男しかいない。売るのも買うのも男。見渡す限り、男の世界だ。
バングラデシュは「渋イケメンの国」だ。木陰で何気なく休んでいたリキシャ引きが、この深みと渋みを醸し出しているのだから。生きざまをしっかりと刻み込んだ、実にいい顔をしている。
バングラデシュに自動販売機はない。その代わりに「ネスカフェマン」がいる。魔法瓶とインスタントコーヒーと砂糖を「着た」若者が、1杯15タカ(22円)で熱いコーヒーを作ってくれる。しかしこの制服、ネスレが作ったんですかね?
テロ事件の影響は?
今年7月、ダッカで日本人7人が殺害された凄惨なテロ事件が起きた。あれから5ヶ月、ダッカの街はすっかり平穏を取り戻していた。朝から晩までダッカを歩き回ったが、危険な空気を感じることはなかった。武装した警官が街のあちこちに立っているが、元々この国は警官の数が多いので奇異には感じない。外国人旅行者はどこにもいないが、それも昔からだ。
少なからずショックだったのは、ダッカの人々が誰もあのテロのことを話題にしないことだ。僕が日本人だと知っても、「あんな事件が起きて・・・」と話し出す人は誰一人いなかった。自国のネガティブな事柄を話したがらないのかもしれないし、5ヶ月前の事件なんて忘れているのかもしれない。
あのテロ事件で何が変わったのか知りたかったが、結局何も変わっていなかった。相変わらず人々は優しく親切で、街に危険な空気などなかった。誰もテロの事なんて覚えていないみたいだった。まぁそんなものなのかもしれない。それが今のダッカのリアルな姿だ。
バングラデシュの首都ダッカの街角で鉄パイプを運ぶ男たち。「人力の国」バングラデシュではどんなに重たいものも、人の力で運んでしまいます。
トラックの運転手が窓から顔を突き出して「俺の写真を撮れよ!」と叫んだ。バングラデシュの男たちは、とんでもなく撮られ好きだ。