インド人はあまり魚を食べない。近海で獲れる魚は小ぶりだし、気温が高いうえに冷凍技術も未発達なので、すぐに魚が腐ってしまうのだ。内陸に住む人々には生の魚を手に入れる手段がなく、せいぜい市場で干物を買うぐらいだ。
遠洋に出てマグロや伊勢エビなどを捕獲する船もいるが、こうした価値の高い魚は氷詰めにされて大都市の高級レストランに卸されることが多いので、庶民が食べる機会はない。そもそもインド人の多くは肉も魚も食べないベジタリアンなのだ。
そんなわけでインドの沿岸部に点在する漁村や漁港は、近海漁業中心の小規模なものだ。しかし南部タミルナドゥ州や西部グジャラート州には遠洋漁業の基地となる港もいくつかあって、隣国スリランカやパキスタン沖にまで船を出しているという。
最近は養殖にも力を入れていて、エビの漁獲量は中国に次いで世界第二位になっている。
南インド、チェンナイの漁港で出会った光景。タミル語で「ヤマゴラ」と呼ばれる巨大なカジキマグロが、荷車に乗せられて運ばれていく。水揚げされたばかりの魚を氷漬けにして、出荷するようだ。
漁を終えた船が船着き場に到着すると、頭にタライを載せた女たちが魚を積み下ろすために集まってくる。
水揚げした魚を竹ざおに吊るして干物を作っている。気温が高いインドでは魚は腐りやすいので、干物にして売るのが一般的だ。日本人のように生の魚を食べる習慣は、インドにはない。
水揚げされたばかりの魚をサギがかっぱらい、それを横取りしようと白いサギが狙っている。
南インド・チェンナイの漁港の朝の風景。色とりどりの漁船やボートが港を埋め尽くしている。
朝の漁から戻ってきた漁師たちが、護岸ブロックの上に座り込んでのんびりとくつろいでいた。酒でもあれば酒盛りを始めるのだろうが、ここは禁欲の国インド。さすがに昼間から酒を飲む漁師はどこにもいないようだった。
漁網をつくろう仕事は、丘に上がった漁師の仕事だ。強い日差しを避けるために麦わら帽をかぶって、休みなく手を動かしていた。
インド西部グジャラート州の沿岸部には、木造漁船を作る造船所がある。遠洋に出てマグロや伊勢エビなどをとる十人乗りほどの船だ。骨組みは昔ながらの木製だが、内壁にFRPを貼って水漏れを防ぐとともに、魚群探知機やGPSを備えることで、遭難の危険は劇的に少なくなったのだそうだ。
港で木造船の補修作業を行う漁師。苔や水草が付着すると船速が落ちるので、定期メンテナンスは欠かせない。最後に防水塗料を塗って再び海に戻る。
インド西部グジャラート州の造船所で、老朽化した貨物船を補修している男。塗ったばかりの真っ赤なペンキが青空によく映えていた。
インド西部グジャラート州の造船所で、老朽化した貨物船を補修している男。雲ひとつない青空の下で、船体についたサビを落とし、塗料を塗り直している。
夕暮れが迫るインドの海に船を出す漁師たち。近海で獲れる小魚を求めて網を投げているようだ。