ひとつの仕事に何十年も打ち込んできた職人たちの顔つきには、惹かれるものがある。もちろん彼らは生きるために働いている。趣味を仕事にしているわけでもないし、仕事を自己実現の手段にしているわけでもない。それでも「自分がやるべき仕事」に迷いなく打ち込んでいる姿には、その人の生き様が確かににじみ出ている。それがカッコいいのだ。そこが美しいのだ。
6月18日に名古屋で、6月25日に渋谷で行う「帰国報告会」でも、インドの働き者をたくさんご紹介します。お楽しみに。
穴だらけの服で働く鍛冶屋。チェーンにつながったふいごで石炭に風を送り、鉄を真っ赤に熱して金槌で打つ。農家が使う鎌やクワといった刃物を作る、この道一筋のベテラン職人だ。
薄暗い染色工場に差し込む一条の光が、働く男たちの鍛え上げられた肉体を闇の中に浮かび上がらせている。化学染料の強いにおいが充満する工場で、男たちはただ黙々と与えられた仕事をこなしていた。
インド南部オリッサ州の山村で田んぼを耕す女性。アディヴァシと呼ばれる小数部族の女たちは、油を塗ってなでつけた髪型が特徴的だ。
インド南部オリッサ州の山村で、雑穀を脱穀する男たち。長い棒を打ち下ろして、その衝撃で脱穀するという伝統的な方法だ。雑穀は臼で粉に挽いて生地を作り、薄いパンのように焼いて食べる。
インド中部マハラシュトラ州で糸を染料で染める職人。鮮やかな緑色に染まった糸を固く絞って乾かしていく。男の上半身は、長年の力仕事で鍛え上げられていた。
インド西部グジャラート州で、革靴を作る職人。木型にそって革を伸ばし、小さな釘を打って固定する。この道一筋のベテラン職人たちが、小さな工房で黙々と仕事を続けていた。
インド西部グジャラート州で綿花の収穫を行う女性。インドは世界最大の綿花生産国で、乾燥地帯を中心に全国で綿花を栽培している。収穫した綿花は紡績工場で糸になり、サリーやルンギーへと加工される。
インドの街角でヘリウムガス入りの風船を売る男。風船とミカンという不思議な組み合わせの露天からは、店主の「売れるものは何でも売ろう」というプラクティカルな姿勢が垣間見える。
インドの街に必ずある仕立て屋。客のサイズに合わせたシャツやズボンをオーダーメイドで仕立ててくれる。都会には若者向けに既製服を売る店も増えたが、旧市街ではこうした昔ながらのテーラーで服を作る人が多い。
インドの街角でチャイを作る男。鍋に牛乳を入れ、茶葉と砂糖を放り込んで煮立たせる。低級の茶葉をぐつぐつ煮込んだチャイは、パンチのある渋みが効いた味だ。上品な味ではないが、これが結構クセになるんだよね。