バングラデシュの旅を終え、バンコクのカオサン通りを歩いていると、偶然僕のことを知っている人に出会った。以前鹿児島県で行った講演会に来てくれて、そのあとリキシャにも乗ってくれた人だった。
 
 深見さんは40歳を過ぎて、奥さんも子供もいる身でありながら、長年勤めていた会社を辞めて、写真の道で生きていこうと一人旅を始めた人だった。すごいですね。(もちろんいい意味で)クレイジーです。
 
 僕自身がクレイジーなことを大まじめに十何年もやっているからよくわかるんだけど、「できる」と「実際にやる」とのあいだには高い高い壁がそびえている。40を超えて家庭があっても旅に出ることは可能だ。でも実際にそれをやる人はほとんどいない。
 
 年を重ねるといろんな事が見えてくる。見えすぎてくる。自分の可能性の限界も見切れてくる。大きくジャンプすることが億劫になる。無難な道を選んで歩くようになる。それが悪いわけではない。大人になるのはそういうことだと思う。
 
 でも、ごく稀に妙なことを思いついて、それを実行せずにはいられない人がいる。深見さんが25年のサラリーマン人生を捨てて旅に出たように。僕がリキシャを漕いで日本一周をしたように。
 
 それが何の役に立つのかなんてわからない。僕らを突き動かしているのは説明しようのない情熱だ。でも結果的にその突飛な行動がこの世界に何かをもたらすことがある。僕はそう信じている。だからクレイジーな連中を少し大目に見てやってくださいねっていう話です。
 

そんなクレイジーな旅の中で撮ったミャンマーの写真。空いっぱいに広がるうろこ雲。金色のパゴダ。バイクで鶏を運ぶおばちゃん。
 

小学校の様子。黒板に書かれたビルマ語を大声で読み上げるという授業。
 

古い僧院にたたずむ少年僧。僧院の敷地内はいつも穏やかな時間が流れている。
 

ビー玉で遊ぶ少年僧。僧侶といってもまだ遊びたい盛りなのだ。
 

マンダレー郊外で牛にスキを引かせて畑を耕す男。乾季のこの時期には野菜やスイカなどを作る。