4月14日からはじまる予定だったニューヨークでの写真展がコロナウイルスの影響で延期になってから、ずっと家で過ごしていました。
やるべき仕事もないし、急ぐ用事もないので、今年のインド旅で撮った写真を整理したり、新しい現像技術の研究をしたりする日々でした。
もともと、長旅から帰ってきた直後はあまり外出せずに家族とのんびり過ごしていたので、緊急事態宣言が出たからといって、生活が大きく変わったわけではありません。
変わったことといえば、ツイッターやフェイスブックからしばらく離れていたこと。コロナ情報でタイムラインが埋めつくされているのを見ていると、どうしても無力感にとらわれてしまうから、SNSもテレビのニュースもほとんど見ないで過ごしていました。
この新型コロナウイルス禍がいつ収束するのかわからないし、以前のように自由に旅をしたり、写真を撮ったりできるのは、もっと先のことになるかもしれない。でも、いつか必ず旅ができる日が来るでしょう。そのときまで情熱を保ちながら待ち続けること。今はそれしかできません。
今回紹介するのは、今年インドで撮影した素敵な笑顔の数々です。「閉塞感の漂う世界を少しでも明るくできたら」という願いを込めて、そして僕自身の心にも笑顔が蘇ってくるような写真を選びました。
インド西部グジャラート州で出会った子供たちの笑顔。古タイヤを転がして遊んでいた。今はこの子たちも思い切り外を駆け回ることができないだろうけど、きっとまた全力で遊べる日が来るだろう。そのときにまた、会いに行きたいな。
インド北部パンジャブ州で出会った笑顔。きっちりとターバンを巻いたシク教徒の男が、素敵な笑顔を向けてくれた。いかつい風貌と真逆の人なつっこさが、シク教徒たちの魅力だ。
インド北部ウッタルプラデシュ州で出会った女性の笑顔。右手に持っているのは牛の糞。インドでは牛糞とワラを混ぜて乾燥させた牛糞燃料が、今も家庭で使われている。重い牛糞を軽々と持ち上げる力持ちの女性だった。
知られざる「パパイヤ大国」がインド。パパイヤの生産量世界一はインドで、世界中のパパイヤの実に43%がインドで作られている。しかし旅人の口に入りにくいのも事実。1個丸ごと買って食べるにはデカすぎるのだ。たまにさいの目に切ったパパイヤが路上で売られているが、これは絶品。一皿10ルピー。
インド南部タミルナドゥ州でココナッツの実を運ぶ女性。南インドでいたるところに生えているココナッツは、ジュースとして飲んだり、白い果実を調味料として使ったり、宗教儀式で割ったりと、多様な用途に使われている主要作物のひとつだ。毎日大量の実がインド各地に運ばれている。
インド北部ウッタルプラデシュ州で出会った少女の笑顔。飼っている山羊を抱いていた。無理矢理抱かれてちょっと迷惑そうな山羊の顔がかわいい。
インド南部タミルナドゥ州で出会った女性の笑顔。ココナッツの実の皮を剥く仕事をしていた。腕の筋力が必要な力仕事を、男たちに混じってたくましくこなしている姿が印象的だった。
インド西部グジャラート州で出会った農家の女性。笑顔からたくましさと陽気さがにじみ出ていた。
インド北部パンジャブ州で、羊飼いのニッカーさん出会った。渋イケメンな風貌だが意外にお茶目な人だった。「うちに寄ってチャイ飲んでけよ!」と誘われたのでお宅にお邪魔した。パンジャブの人はとにかく二言目には「チャイ飲むか?」である。旅人をチャイで歓待するのが、この土地の伝統なのだ。
市場で野菜を運んでいた少年。「こいつスラムドッグ・ミリオネアみたいだろ?」と市場の男が言ったので、思わず頷いてしまった。映画の主人公の少年時代に雰囲気がよく似ている。貧しくて、明るくて、よく働く。今でもインドにはこんな少年がたくさんいる。