ハノイはうるさくて埃っぽくて気忙しい街だったが、同時にとても魅力的だった。何もかもが日本とは違っていた。
『重慶大厦』は節約旅行家のあいだでは有名な安宿ビルで、欧米人や東洋人のバックパッカーも何人か見かけたが、その数は決して多くはなかった。
やはりこの3人はグルなのだ。イカサマで儲けさせてやるというオイシイ話をちらつかせておいて、逆にこっちの金を巻き上げようという魂胆なのだろう。
僕の長い旅は、香港の薄暗い雑居ビルの一室から始まった。出発からわずか4日目にして、この先の旅行資金の全てを失いかねない大ピンチに立たされていた。